2012・週刊少年ジャンプNo.27

 作品名:いぬまるだしっ
 構成力:5 世界観:5
 デザイン:3 ストーリー:7
 表現力:5 キャラクター:5

※ 構成力と世界観、デザインとストーリー、表現力とキャラクターは一対、
それぞれ合計で必ず10になります。
※ 数値が高い方が優れているというわけではなく、特色が強いということです。

 今号でいぬまるだしが終了しましたので、評価しておきます。

 打ち切り4コマ漫画、メゾン・ド・ペンギン作者による2作目の連載ギャグ漫画。
4コマじゃない普通の漫画は初連載でしたが、違和感もなく、
前作より数段レベルアップしており、作者の成長が手に取るように分かった出世作でした。

 特筆すべき構成力も世界観もありませんでしたが、それが逆にバランスが取れていました。
終わりに向けての、いぬまるくんのお父さんの正体をバラす展開や、まとめ方に工夫があり、
ギャグ漫画にありがちな、とんでも展開で笑いを取って終わる強引さがなくてよかったです。

 作者は絵がうまい方ではないので、絵的な部分での見栄えには期待できませんでしたが、
園児のかわいらしいキャラでカバーできており、前作の失敗は繰り返していませんでした。
ストーリーの中で笑わす事もできており、一発ネタに頼るような展開もなく秀逸でした。

 ギャグ漫画にありがちな、大げさな表現、奇抜な格好で笑いを取る、(主人公は別)
安直な表現技法は控え、ありふれた幼稚園の延長線上での展開を心がけていました。
キャラの豊富さ、奇抜さに頼る事もなく、限られたキャラを上手に活用できていたと思います。

 打ち切りではなく、しっかりと終わらせることができたのは、作者にとってプラスでしょう。
今作で、作者自身の成長度合い、イロモノ表現に頼らなくても笑わせられるギャグセンス、
社会風刺や流行などへの敏感さ等、作者の懐の広さが垣間見えた作品となりました。

 前作は本当に酷かったですが、ここまで進化を遂げた作家は、過去にいませんでした。

 ネタにはしていましたが、ヘルニアで入院(休載はなし)するほど、腰が酷いようなので、
しっかりと完治させ、また次回作で楽しませてくれる事を期待したいと思います。

 
今週のピックアップ

トリコ
 ジャンプで今、面白い王道バトル漫画ってコレしかないからな。
ワンピースもナルトも、過去の栄光にすがって続いているようなものだし、
ブリーチもリボーンも落ち目、べるぜバブやぬらりひょんは論外といった感じだしな。

 この号で、トリコが灰汁獣を倒すシーンが秀逸で、バトル漫画の模範のような描写だった。
何連の釘パンチか知らないが、灰汁獣が連鎖で吹っ飛びながら、
最後は悶え苦しみ、木っ端微塵に肉片が飛び散っていく様はスカッとするし興奮した。
絵的な描写で、こんなに感情が揺さぶられたのは久しぶりだな。

 自然と『きたねぇ花火だ』と、べジータさんの有名なセリフを呟いてしまった。(笑)

 その前の、師範代のモブ1が、ばばあに生け作りにされるシーンも秀逸だった。
あの、腹の肉が抉り取られて、骨だけになっていたシーンね。
あまりに繊細で、死んでいることにも気づかなかった・・・、こういう表現が、
少年達をワクワクさせるし、バトル漫画の大事な原点だったりするんだよな。

 最近のミーハーバトル漫画は、こういう凝ったワクワクする表現ができないからな。
サクッと単純に殴り合いしたり、イケメンキャラの大技でごまかすしか脳がない。
そういう陳腐漫画ばかり乱造されたら、漫画の文化は完全に終わる。

 それにしても、食義の真髄は怒りを抑えることだと説明しているが、
どうせ1年後くらいには、トリコが『てめぇ!』とか、食義関係なく怒っている姿が想像できる。
バトル漫画にありがちだけど、過去の設定が都合よく忘れ去られるんだよな。
まあ、そういったネタを含めて楽しければ、それでいいんだけど。

 こういう、漫画の純粋なネタだけで評価できる漫画って、ジャンプでは稀少になった。
他のジャンプ漫画だと表現技法が陳腐(エロかキャラゴリ押し)だから、語る価値もないし。

 銀魂が終わったら、読む価値があるのはトリコだけになるから、
もはやジャンプを買う必要もなくなるな・・・。(トリコはコミックス買えば済むし)
 
 
こがねいろ
 最近のジャンプではめずらしい、3話連続集中連載という形での青春漫画読切。
バクマンの中での話だけかと思っていたが、短期集中連載なんて実際にあるんだな。
過去、これと同じ形で連載した漫画ってあったっけ?

 作者は、『競技ダンス部へようこそ』の読切作者で、アレが非常に好評だったらしい。
確かにジャンプでは珍しい、王道青春漫画ではあったけど、騒ぐほどのものだったか?
まあ、ジャンプに女読者が増えた影響で、青春漫画が支持されるようになっているのだろう。

 高校3年の、進路や恋で、モヤモヤしている奴らが主役の話だが、
絵的に地味だから、これを漫画として読める形に創作するのが難しいんだよな。
単に『青春って甘酸っぱいね』だけのストーリー性だけでは、少年漫画は勝負できない。

 そうなると結局、エロを前面に出したり、美少女を乱発して野郎の興味を引きつけたり、
上っ面だけの工夫で、何とか漫画の人気を維持しようとしてしまうのだが、
そこを抑えて、どれだけ真摯に漫画表現に向き合うかが重要となってくるわけだ。

 この読切も好評であれば、おそらく同じジャンルで連載という流れになると思うが、
まあ、お色気漫画が乱立している現状に比べればマシで、
こういった系等の青春漫画に取って代わるのであれば、こっちを支持したいところだ。

 でも連載といっても、この作者は既に、他誌のヤングマガジンで連載しているようだが、
ちなみにジャンプ作家は他で描いてはダメな契約をしているが、この作者は違うようだな。
ってことは、ジャンプが金を積めば、マガジンと縁を切ってこっちに流れる事も可能だ。
っていうか、同時掲載も可能かもしれないな。

 ま、マガジンで描いているなら、無理してこっちに来ることもないとは思うが・・・。
ジャンプが大金を積むほどの価値もないと思うし、今あるチャンスを大事にしなさい。
青春漫画の代わりは、ちょっと前の読切『クロス・マネジ』の作者だっているわけだしな。

 
いぬまるだしっ
 巻末小増11ページということで、打ち切りではなく綺麗に終わらせてもらってよかったね。
連載を終わらせた原因としては、腰の悪化の影響もあったと思うし、何より、
尊敬する作家が描いているバクマンの影響も、強かったのだと思う。

 いたずらに長引かせるよりも、つまらなくなる前に終わらせてよかったと思うよ。
漫画はこれだけでなく、次回作だって描けるわけなのだから、こだわる必要もない。
誰とは言わないが、1つの漫画に執着し、あの手この手で延命を図っている、
某漫画家達も見習ってほしいところだね。

 そういえば、腰が痛くて連載を終わらせたといえば、鬼面組の作者がいるな。
あれはジャンプ歴代1位のギャグ漫画だったが、コミックスは20巻までだった。
長く続ければいいわけでなく、名作はボリューム関係なく読者の思い出となる。

 最終回でまさかの再登場、手羽先先パイのネタが相変わらず笑える。
アフロッコリー君も売れたみたいだし、アメリカに留学した10円ハゲも、
女をはべらせて元気にやっているようだし、この漫画のキャラは基本、嫌味がなくて良い。

 スケットダンスのキャラとか、スカしている奴が多くて、殴りたくなってくるかな。
でもミーハーや中二は、あっちの方が面白く感じるんだよな。
感覚がおかしいのは、俺かあいつ等か、はたしてどっちなんだろうな?

 ジャンプからまた、まともな部類に入っていた漫画が消えていく・・・。
いよいよジャンプが末期に近づきつつあるが、後進が全く成長していない。
エロやお手軽バトル漫画ばかり乱造し、歴史に名を残すような漫画家が育っていない。

 いい加減、編集部も目を覚まし、深夜アニメ化狙いの小粒な漫画ばかり育成してないで、
ゴールデンでの放送を狙えるような、ワンピース、ナルト、トリコに続く、
王道バトル漫画の連載を意識するべきだし、もっとチャレンジしろと言いたい。

 ギャグ漫画にもしっかり力を入れて、後進の育成に励めよ。

2012年07月26日 23:59

1コメント | 週刊少年ジャンプ



トラックバックURL:
http://blog.ore-sama.jp/jump/20120726235939/trackback/


 

この記事へのコメント

RSS

    こんばんはです。

    ある予備校の著名な先生(故人)が、著書で、予備校講師の一生を面白おかしく、
    「肌で10年、技術で20年、名声で10年」
    と表現されていました。

    最初は生徒との年齢差もあまりなく、肌で付き合えるが、ある時からそれが突如無理になってくるので、そこで、技術で20年近く持たせる。しかしそれとて年とともに体力も技術も衰えはじめ、残りはそれまで得た名声で何年か持たせ、引退していく・・・とのことです。

    漫画家の場合も基本的に同じだと思われますが、俺さんの批評を拝読し、時にジャンプの名のしれた作品を並行して読んでみるに、先ほどの先生の言をもとにして私の受けた印象を総括して表現してみれば、「肌」レベルの作家については編集者がその能力を引き出すどころか足を引っ張るようなパターンの多そうなのが少なからず見受けられるのと(それで作品自体をつぶしてしまう)、「名声」というより「惰性」で続いているような作家が目立つのとの2極が、私の見る限りにおいては多いような気がしてなりません。

    もっとも、「こち亀」の近年のハチャメチャは、一種の「滅びの美学」の体現としてみれば、興味深いものといえるかもしれません。

    やくも少年 2012年07月28日 01:02

     


 

コメントを書く